FX投資入門 の新たな展開

平成18年6月に「証券取引法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。
この法律は証券取引法を大幅に改正し名称を金融商品取引法に変更するもので、主要部分は平成19年夏から施行される予定です。
今回の改正は、投資商品と投資サービスについて包括的かつ柔軟な制度(投資サービス法)を整えようとするものです。
このように多岐にわたる改正法の内容を理解するには、土台の部分にあたる証券取引法や同法のここ数年の重要な改正の内容を知っておく必要があります。
そこで本書では、平成18年改正の内容を紹介するだけではなく、証券取引法の基本的な仕組みと最近の動向を説明し、金融商品取引法で何かどう変わるのかを明らかにするよう努めました。
改正法の内容を理解したいという方のほかこの機会に金融商品取引法を全般的に勉強してみましょう。
また、制度の説明だけでなく制度の趣旨・目的をできるだけ書き込み、疑問点を指摘しました。
制度がどうあるべきかについて、考えていただきたいと思ったからです。
金融商品取引法は、昭和23年(1948年)に制定された証券取引法を改正してその名称を変更したものです。
このように形式的には、それまでの証券取引法の改正なのですが、実質的には、新法の制定といってよいほど法律の適用対象および内容に変更を加えています。
金融商品について幅広く横断的なルール(金融サービス法)を制定しようという動きは、平成9年ごろに遡ります。
審議会の議論の成果として平成12年に制定された「金融商品の販売等に関する法律」(金融商品販売法)は、たしかに、銀行・保険を含む「金融商品」に適用されるという点で横断的なものでした。
しかし、金融商品の組成から償還までの全工程をカバーするのではなく、販売・勧誘の側面しかカバーしない点で包括的なものではありませんでした。
また、ルールの内容も、業者に元本割れリスクの説明義務と損害賠償責任を課し、また勧誘方針の策定・公表を求めるといった限定された範囲にとどまっていました。
つまり、金融商品販売法は「金融サービス法」というには大変不十分なものでした。
他方、ベンチャー企業の育成や「貯蓄から投資へ」という大きな資金の移動の過程において、組合契約や匿名組合契約を利用して投資や事業を行う各種のファンドのように、従来、規制が講じられていない分野で新しい商品が登場するようになりました。
ラーメン施設の運営を行い、ラーメン店の売上げに応じて配当するラーメンファンド、CDの制作・販売を行い、販売事業から生じる収益を分配する音楽ファンドなどもありました。
また、平成14年ごろからは、外国為替証拠金取引をめぐる投資家被害が拡大し、応急的に法律の手当てがなされましたが、規制の隙間で開発された商品についての投資家保護のあり方が問われることとなりました。
そこで、預金・保険を含めた「金融商品」を包括する金融サービス法は将来の課題として残すこととして、まず預金・保険以外の「投資商品」について業者横断的なルールを定めることです。
金融サービスとは、実は投資サービスのことであり、イギリスで銀行・保険を含む包括的な立法が実現したのは、2000年の金融サービス・市場法だったのです。
わが国では、まずイギリス1986年段階の金融サービス法を目指すことになったというわけです。
審議は金融審議会金融分科会第一部会で行われ、平成17年7月に「中間整理」を、同年12月には報告書「投資サービス法(仮称)に向けて」を公表しました。
これに基づいて、平成18年3月に証券取引法その他の法律の改正案が国会に提出され、6月7日に成立、6月14日に公布されています。
金融商品取引法の内容は、H章以下で説明しますが、ここで「投資サービス法」としての金融商品取引法の特徴を紹介しておきましょう。
まず、金融商品取引法は投資について横断的・包括的な規制を及ぼしています。
具体的には、それまで証券取引法の適用対象とされてこなかった組合その他の契約を利用したファンド(集団投資スキーム)に規制を及ぼすとともに、抵当証券、信託受益権、商品ファンドのように、それまで異なる法律で規制されていた商品を適用対象に含めています。
とくに、ファンドの定義は包括的なので、新しい投資スキームにも対応できます。
金融商品取引法がこのように横断的・包括的な規制を採用したのは、投資家にとって経済効果が同じサービスについては、同じような仕組みの下で保護が与えられるべきであること、投資への流れを加速できること(投資の促進)によるものです。
次に、横断的な規制を実現するためには、証券取引法の改正だけでは足りませんでした。
今回の立法では、銀行法、保険業法、商品取引所法、不動産特定共同事業法等も改正して、投資家保護のルールについて金融商品取引法と同様の規制を適用することとしています。
これらがあって初めて、投資性の強い預金・保険商品等に投資家保護のルールが横断的に適用されることになります。
ですから銀行法・保険業法等の改正条文は実質的には「投資サービス法」の一部です。
第三に、横断的な規制といっても、あらゆる投資家に対して一律に保護ルールが適用されるのではなく、プロ投資家(特定投資家)とアマ投資家(一般投資家)を分け、プロ向けの規制は緩和して金融商品の開発を促すことにしています。
これを「規制の柔構造化」と呼んでいます。
なお、金融審議会における審議過程では、販売・勧誘ルールについては、投資商品にその適用を限定する必要はなく、預金や保険を含めた「金融商品」に共通のルールを定めるべきではないかとの意見もあり、議論がされました。
目に見えない権利を商品として売るという点では、業者規制を柔軟化する点に特徴が表れています。
以上の結果、出来上がった金融商品取引法は、従来の証券取引法、金融先物取引法、有価証券に係る投資顧開業の規制等に関する法律になっています。
また、投資信託・投資法人法の一部を取り込んでおり、商品投資に係る事業の規制に関する法律(商品ファンド法)の内容は一部削除されています。
最後に、投資サービス法の審議過程で生じたさまざまな改正項目が金融商品取引法に取り込まれています。
罰則の強化、公開買付・大量保有報告制度の改正、有価証券報告書の記載内容に係る確認書・内部統制報告書制度(日本版SOX法と呼ばれる)、四半期報告書、証券取引所の独立性の強化などがこれに当たります。
これらは、実質的な意味における投資サービス法ではありませんが、いずれも重要な改正ですから、本書で改正の背景と内容をやや詳しく扱います。
改正法は、数段階にわたって施行されることとなっており、罰則の強化等は平成18年7月4日から施行済み、公開買付制度・大量保有報告制度は公布の日から6ヵ月以内、その他の部分は公布の日から1年6ヵ月以内に施行されます。
法律の名称は、証券取引法から金融商品取引法に変更されますが、そこにいう「金融商品」とは「投資商品」のことを意味することに注意を要します。
金融商品取引法は有価証券の取引とデリバティブ取引に適用されます。
金融商品取引法は金融商品の定義を置いていますが、後述のように、金融商品はデリバティブ取引を定義するための技術的概念であり、金融商品取引法は金融商品の取引に適用されるわけではないことに注意を要します。

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